周防大島への移住|仕事・生活費・家探しの12問
更新日:9月28日
2018年に脱サラして山口県の周防大島に移住した、ひじき漁師のさかえる(榮大吾)です。
移住相談に乗っていると「仕事はありますか」「家はどうやって探すんですか」「田舎の人間関係ってどうですか」という話になります。自分も移住する前は何から手をつけていいのか全くわからなかったので、気になるところはよくわかります。
ただ仕事も家も、どんな暮らしをしたいかによって紹介できるものが変わるんですよね。畑をやりたいのか、お店を出したいのか、子育てをする場所を探しているのか。「周防大島に住みたい」のもう少し先まで聞かせてもらえると、具体的な話ができます。
この記事では周防大島での仕事や求人の探し方、生活費、空き家、お試し暮らしについて、移住相談でよく聞かれる12の質問に答えています。わし自身の移住前後の経験と、町の制度や相談先を分けてまとめました。
1.周防大島に仕事はありますか

周防大島にも仕事はありますが、都市部のようにいろんな業種の会社から選べるわけではありません。事務仕事をしたいのか、現場で体を動かす仕事でもいいのかによっても、見つかりやすさはだいぶ違います。
例えばわしのところでは冬のひじき漁の時期に収穫を手伝ってもらっていますし、夏のイワシ漁や春の蜂蜜の時期に人を探しているところもあります。季節ごとに仕事を組み合わせながら暮らすという働き方もあるんです。
ただ給与水準が高いかといえば、そこは正直高くありません。仕事があれば何でもいいという話なのか、自分で何かを始めるまでの食いぶちを稼ぎたいのか。相談するときにはそのあたりも話してもらえると紹介しやすいです。
島の先輩たちからも「それで食べていく間に、あなたは何がやりたいの?」ということをまっすぐ聞かれます。わしも移住前に考えたのは、生涯自分の腕で仕事をして誰かからお金をもらい続ける人生でありたい、ということでした。
2.周防大島の求人はどこで探せばいいですか

求人に出ているものを調べるのとあわせて、現地で人に会って話をすることを勧めています。仕事に限らず家や畑の話もそうで、ネットには出てこない情報が結構あるんですよね。
求人や相談窓口は周防大島移住なび「島で働く」で確認できます。町の無料職業紹介所の案内もあります。募集状況は変わるので、今応募できる仕事かどうかは募集先に確認してください。
相談のときには「人検索」という言い方をしています。こんなことをしたいと話すと、それならあの人に会ってみたら、と紹介してもらう。そこからまた別の人につながっていくという感じです。
紹介する側にも責任があるので、誰でもすぐに知り合いを紹介できるわけではありません。わし自身も先輩たちに時間をとってもらってお世話になってきたからこそ、その方たちに紹介する人のことはちゃんと知っておきたい。
何をやりたいのか、どのくらい働いてどのくらい稼ぎたいのか。そういう話を現地でしているうちに、求人票を探しているだけではわからなかった働き方が見つかることもあります。
3.移住後の生活費はいくら必要ですか

生活費は家族の人数や車の台数、働き方によって変わります。わしらが移住を考えたときは「固定費を下げて夫婦で月30万円ぐらい稼げれば、ひとまず暮らしていけるよね」という計算をしていました。これは当時のわが家の見積もりで、島に来れば誰でもその金額で大丈夫という話ではありません。
会社員を辞めたからといって、最初から自分の事業だけで食べていけるとは思っていませんでした。集落支援員の仕事や副業、日当の仕事をしながら、妻もアルバイトに出てというところからのスタートです。
もともとウェブ関係の仕事で月20万円前後の収入があった(というより移住する前の備えとして1年ほど必死こいてスキルを磨きました)のでなんとかなったというところも現実。準備なしで飛び込んでなんとかなる人も少なくない数いらっしゃいますが、どうも生存者バイアスがかかってると思いますし。
家賃が下がったのは大きかったですが、車にかかるお金は増えます。夫婦それぞれの車に加えて農業や漁業をやるための軽トラが必要になることもあるので、家賃だけ見て安く暮らせると考えると話が違ってきます。
自分たちの暮らしにいくら必要なのかが見えてくると、いきなり全部うまくいかなくてもこの仕事をしながら始められるね、と考えやすくなりました。というか、ちゃんと収支の計算はしましょう。
4.移住先の家は賃貸と購入のどちらがいいですか

最初の家で一生住む場所まで決めようとしなくてもいいと思っています。まず借りて暮らしてみて、日当たりや周囲の様子、自分たちの仕事との距離を知ってから考えるというやり方もあります。
わしは島の中で3回引っ越しています。最初に入った集落から漁の師匠が住むところへ移り、そのあと日当たりのいい畑がすぐ裏手の場所に住みたくなって、土地を譲ってもらえないかとお願いしました。
最初から今の場所がいいとわかっていたわけではありません。暮らす中で仕事をする場所も人とのつながりも変わって、そのたびに住みたい場所が具体的になっていった感じです。
ただ空き家を借りること自体、都市部で賃貸物件を借りるのと同じではないんですよね。大家さんの実家だったり先祖代々の家だったりするので、どんな使い方をしてどう管理するのかは最初によく話しておく必要があります。
物件を探す入口は町の空き家・空き地バンク。借りられる家と購入する家の条件を確認してから、現地で見せてもらうと話が具体的になります。
5.空き家があるのに、なかなか借りられないのはなぜですか

空き家を借りにくい理由の一つが、貸したあとも家を管理してもらえるかという持ち主の不安です。家や畑が欲しいと言われても、夏の草刈りまで本当にできるのかな、と。
草は想像以上の速さで伸びます。わしも畑を上から順番に刈っていると、下まで終わった頃には最初の場所がもう元に戻っていたりします。夏の管理は本当に大変です…。
以前も、空き家を譲ったあとに新しい持ち主が管理をせず、元の持ち主が引き続き草を刈っているという話を聞きました。そういうことがあれば、次に誰かに貸したり譲ったりするときも慎重になるのは当然だと思います。
相談では二夏ぐらい草を刈っている様子を見てもらうと話が変わってくる、とお伝えすることがあります。何年やれば土地をもらえるという約束ではなく、それくらい普段の様子を周囲の人は見ているということです。
こまめに畑に出たり草を刈ったり、集落の溝掃除に参加したりする中で、この人たちなら任せても大丈夫そうだと思ってもらえる。その積み重ねで家や土地の話が出てくることがあります。
6.周防大島のお試し移住はいつ行くのがいいですか

観光のお客さんが多い週末だけでなく、なんでもない平日にも来てほしいです。できれば冬の寒い時期も。景色のいい日に遊びに来るのと、そこで毎日暮らすのとでは見えるものが違います。
特にお店をやりたいという方には、平日や雨の日のお店の様子も見ておいた方がいいと話しています。週末に満席になるお店でも平日はどうなのか、というところまで見ないと商売のイメージが持てませんよね。
あるいはすでに開業しているお店の先輩に話を聞くにしても、忙しいランチの時間や連休中より落ち着いているときの方が話しやすいですよね。
わし自身も移住前に10日ほどお試し暮らしをしました。その間にいろんな先輩たちに会って、話を聞いて、紹介してもらってというところから一気に縁がつながりました。数日の観光とは別に、少し長くその土地で過ごす時間があるとわかることが増えます。
町の住宅を利用したい方は周防大島町お試し暮らし制度へ。利用条件や申込方法は町の案内で確認してください。わしが滞在した日数と、現在の制度の利用期間は別の話です。
7.田舎の人間関係が不安です

移住相談で「人がいいところですよ」と言われることは多いですが、どこに行っても気が合う人もいれば合わない人もいます。学校のクラスと同じで、全員と仲良くなれる場所があるわけではないと思っています。
わしの場合は地域で信用されている方に紹介してもらったことが、島で暮らし始めるうえで本当に助けになりました。
移住前に集落を案内してもらったとき、車で走っていても人がいれば止まって窓を開けて雑談したり、家に寄って挨拶したり。その様子を見ながら、地域の人とどうやりとりをするのかを教えてもらった感じです。
ひと口に周防大島といっても住む場所で集落の雰囲気は違います。自分と考え方の近い人に紹介してもらいながら、家の条件だけでなく周りでどんな人が暮らしているのかも知っていけるといいと思います。
8.自治会や消防団の活動は大変ですか

道路が通れるように草を刈ったり、ゴミ捨て場を維持したり、災害に備えたり。集落で暮らしていると住民自身がやっていることが結構あります。草刈りや掃除も誰かがやってくれるものだと、都市部にいた頃はわしも思っていました。
うちの集落では梅雨前の掃除や草刈りがありますし、消防団の訓練も負担を減らしながら続けています。ただ活動の回数ややり方は地域ごとに違うので、住もうとしている集落で聞いておくのが確実。
普段から行事に参加したり挨拶をしたりしていると、知らずに何かやってしまったときにも教えてもらいやすくなります。逆にお互いのことを知らないままだと、ちょっとしたことでも話がこじれやすい。
都市部の暮らしから見ると面倒に感じることでも、なぜそういうやり方になっているのかを一度聞いてみる。自分の常識と違ったとしても、そこにはその土地なりの事情があったりするんですよね。
9.周防大島の病院や通院はどう確認すればいいですか

病院への通いやすさは住む場所を決める前に、具体的に確認しておいてほしいところです。周防大島の中でも橋に近いところと奥の方では移動にかかる時間が違いますし、病院があるというだけでは自分が必要な診療を受けられるかまではわかりません。
相談のときにも、どの診療科が何曜日にやっているのかまで見ておいた方がいいと話しています。通院が必要な方は受診先に確認して、そこまでどう通うのかも含めて住む場所を考えてほしいです。
島の暮らしにはいいところがたくさんありますが、便利かといえば不便なこともあります。医療のことを気にされている方に、島だから何とかなるよとは言えません。
10.子育てや学校はどうですか

少人数でよく見てもらえることをいいと感じる人もいれば、同級生が少ないことや学校の統合を心配する人もいます。同じ環境でもどう受け取るかが違うので、子育てしやすいですよの一言ではなかなか説明できないところです。
それから相談でお伝えしているのが送迎のこと。習い事に行くにも友達と遊ぶにも、親が車を出す場面が増えます。通学方法も学校や住む場所によるので、小さいうちだけでなく進学してからの暮らしまで考えておく必要があります。
一方で夕方に潮が引いたら磯へ遊びに行ったり、自分で釣ってきた魚を食べたりという暮らしがすぐそばにあります。わしはそういう時間を過ごせることが、この場所で子育てをする良さだと思っています。
11.家族が移住に乗り気ではないのですが

移住したい人だけがどんどん話を進めて、一緒に暮らす人がどうしたいのかを聞かないまま来るのは危ないと思います。家族だからもうわかってくれているだろう、とは限らないんですよね。
わしも移住前に、奥さんは何がやりたいのか、夫婦で話したのかということを周囲の人に言われました。自分がやりたいことを話すだけでは足りなかった、ということです。
島で事業を始めると言うと反対されることもあります。わしもあの値段ではひじきは売れないとか、今から漁業をやるのはやめた方がいいとか散々言われました。結果が出る前から一緒に暮らしていく家族が納得しているかは、やっぱり大きいです。
不安に思っていることや、やってみたいことを紙に書き出して話す。移住するかしないかだけでなく、これからどんな暮らしをしたいのかをお互いに聞く、話し合う時間をとことんとってほしいです。
12.人口が減っていく島で暮らすことに、不安はありませんか

人口が減ることを気にしなかったわけではありません。むしろわしは人が減って高齢化が進んでいる場所でどうやって暮らしを成り立たせていくのかを知りたくて、移住先を探していました。
周防大島を選んだのは、先輩移住者や町の職員の方がいいことばかり言わず現実も伝えてくれたことが大きかったです。実際に会って、この人のように生きていきたいなと思える先輩が何人もいました。
今住んでいる集落の周囲にも、ここで暮らそうとする人たちがひと組、またひと組と来ています。人口が減る中で規模が縮小していくことは避けられなくても、そこで暮らして仕事をする人がいることまでなくなるわけではありません。
わし自身もひじきの仕事をしながら畑や里山を管理して暮らしています。この場所で食べていけるようにすることと、暮らす場所を維持していくことはつながっているので、そこを日々続けているというのが今の状況です。
移住先がまだ絞れていない方へ

わしは広島県に相談に行ったときに、山口の方がいいのではと勧めてもらいました。そこから周防大島の人を紹介してもらって、島での暮らしにつながっています。
まだ行き先が決まっていないなら、移住フェアでは県単位の相談窓口で希望を話してみるという回り方もあります。どの市町村に行くかを決める前に、海の近くがいいのか、雪のない場所がいいのか、どんな仕事をしたいのかを聞いてもらうと候補を絞りやすいです。
移住を考えている方には来てほしいと思っていますが、いいところばかり伝えて来てもらうのは違うと思っています。虫も出るし草も伸びる。道路や集落の掃除もある。そういうところまで少し体験したうえで、自分たちがやっていけそうかを考えてもらいたい。
わし自身もいいことだけでなく現実を教えてもらったおかげで、島での暮らしを始められました。相談に乗るときにも、その部分はちゃんと伝えていきたいと思っています。
町への移住相談は周防大島町空家定住対策課で受け付けています。わしのこれまでの仕事や活動はプロフィールに載せています。








